今回はポルトガル語の仮定法についてです。
日常生活においても仮定法を使った表現はよく使いますよね。よってポルトガル語学習者はしっかりマスターしたいところ。
特に『現在の事実に対する仮定』は参照する参考書などによって説明が微妙に異なっていることがあり、注意が必要です。
ポルトガル語の仮定法
仮定法とは『もし~ならば、~だろう』とする文法ですね。
英語で使う『if』の代わりにポルトガル語では『se』を使います。
基本的に仮定法は以下のような構造です。
条件節:接続法
帰結節(主節):直説法
Se tivesse muito dinheiro, compraria o carro.
もしお金がたくさんあったら、車を買うんだけどなぁ。
この文で言うと前半が条件節で後半が帰結節です。
仮定法は『現在』『過去』『過去完了』『未来』の4つに大別すると分かりやすいです。
これは参考書などによって説明が違っていたりするので、あくまで参考としてください。
この4つと条件節、帰結節の構成を表にすると以下の通り。
仮定法 | 条件節 | 帰結節 |
---|---|---|
仮定法現在 | se + 接続法過去形 | 直説法不完全過去形 or 過去未来形 |
仮定法過去 | se + 接続法過去形 | 直説法不完全過去形 or 過去未来形 |
仮定法過去完了 | se + 接続法過去完了形 | 直説法過去未来完了形 |
仮定法未来 | se + 接続法未来形 | 直説法未来形 |
ここで『仮定法現在』の条件節は接続法過去形としていますが、特にネット上には『接続法未来形』にしているものがあります。
うーん、間違ってないと思うのですが、それだと未来になると思うんですよね。
例えば日本語で
・もしお金があったら、車を買うんだけどなぁ
・もしお金があれば、車を買うんだけどなぁ
この2文はほぼ同じ意味ですよね。しかし、前者の条件節は過去形、後者は現在形です。
ただし、ポルトガル語の仮定法の条件節で『接続法現在形』は用いません。
理由は不明ですが、文法的に使いません。これは重要です。
そうなると『仮定法現在』の条件節は『接続法過去形』にするのが自然だと私は思います。
そのように書いてある参考書もあります。
前置きが長くなりましたが、具体的に内容を見ていきましょう。
現在の事実に対する仮定
現在の事実に対する仮定は『もし~ならば、~だろう』という意味です。
ポルトガル語の構成は
条件節:『se』+ 『接続法過去形』
帰結節:直説法不完全過去形 or 過去未来形
となります。
この場合、帰結節は不完全過去形だったり、過去未来形だったりします。これはどちらを使っても問題ありません。
以下例文
Se eu fosse ao Brasil,visitava a praia de Rio de janeiro.
もしブラジルへ行ったら、私はリオデジャネイロのビーチに行くんだけどなぁ。
Se eu estivesse de boa saúde, fazia exercício todos os dias.
もし私が健康だったら、毎日練習するのだが。
いずれも、条件節は接続法過去形であり、日本語での『~だった』という過去形に訳していますが、実際は『現在そうではない』ということを示しているので、これは『現在の事実に対する仮定』なのです。
帰結節は過去未来形でもいいので、次のようにも書けます。
Se eu fosse ao Brasil,visitaria a praia de Rio de janeiro.
もしブラジルへ行ったら、私はリオデジャネイロのビーチに行くんだけどなぁ。
不完全過去形でも過去未来形でもいい理由ははっきりとは分かりませんが、おそらく両者とも『線の過去』だからです。
すなわち『過去のある時点から現在まで含む過去のどこか』を示しているので現在も含んでいるのです。
過去の事実に対する仮定
過去の事実に対する仮定は『もし~だったならば、~していただろう』という意味になります。
構成は
条件節:『se』+ 『接続法過去形』
帰結節:直説法不完全過去形 or 過去未来形
となります。
あれ?と思いませんか。これさっきの『現在』と同じですよね。
そうです。同じなんです。以下例文。
Se eu tivesse bastante dinheiro,comprava aquele carro.
もし私が十分お金を持っていたならば、あの車を買っていただろう。
Se ele tivesse mais força,passava prova.
もし彼がもっと努力していたならば、試験に受かっていただろう。
よく見ると帰結節の日本語訳が変わっているだけで、構造は『現在』と同じです。
つまり文脈や経緯から読み足らないといけないということです。
しかし、帰結節が過去になることを明確にしたいのであれば、次に紹介するように仮定法過去完了形を使うと良いでしょう。
仮定法過去完了形
仮定法過去完了形は『もし~だったならば、~してしまっていただろうに』という意味になります。
このようにしたい場合は
条件節:『se』+ 『接続法過去完了形』
帰結節:『直説法過去未来完了形』
とします。ややこしいですね。
以下例文。
Se eu tivesse tido bastante dinheiro, teria comprado aquele carro.
もし、十分お金を持っていたら、あの車を買ってしまっていただろうに。
Se ele tivesse tido mais força,teria passado prova.
もし彼がもっと努力していたならば、試験に受かってしまっていただろうに。
条件節は完了形なので、『ter』動詞が追加されます。それを接続法過去形にします。
さらにもともと『ter』動詞が入っていたので、過去分詞にすると『tido』というあまり見かけない形になります。
ポルトガル語の文章などでは時々こういう表現も見かけますよ。
帰結節も完了形ですので、『ter』動詞を入れて過去未来形なので『teria』となるのです。
よく慣らさないと非常に難しいです。
また、いずれも意味としては、『過去に対する事実』と大きく違いません。
ただし、帰結節の出来事が過去のある時点で完結していることを強調できる点がニュアンス的に少し違いますね。
ちなみに仮定法完了形では、帰結節は直接法過去未来形のほうが一般的な印象です。
未来の事実に対する仮定
未来の事実に対する仮定は『(将来的に)もし~ならば、~するだろう』という意味になります。
このようにしたい場合は
条件節:『se』+ 『接続法未来形』
帰結節:『直説法未来形』
とします。
以下例文。
Se você quiser, eu irei.
もしあなたが望むなら、私は行きます。
Se fizer sol amanhã, iremos à praia.
もし明日晴れるなら、私たちはビーチに行くでしょう。
『se fizer~(~するなら)』『se tiver~(~があるなら)』『se quiser~(~をのぞむなら)』こういった表現はよく使うので何度も言って、しっかり覚えておくといいですよ。
単に条件の時は接続法を用いない?
仮定法についての説明を見るとこのように書いてあるものが多いです。
仮定を含まない単なる条件節の時は接続法を用いない。
以下例文
Se você sai da casa, eu também vou.
もし、あなたが出かけるなら、私も行きます。
Se você saísse, eu também ia.
もし、あなたが出かけるならば、私も行くんですけどね。
前者は、ただ条件を提示しているだけなので接続法は用いていません。
この場合はたとえ英語の『if』に相当する『se』を使っていても、条件節も帰結節も『直説法現在形』となります。
うーん。分かりづらいですね。
ただ日本語訳をよく見比べるとそのニュアンスに違いがあるのが分かります。
前者は『行くかどうかわからないけど』というのではなく『あなたが行くのなら、私も行きます』という単なる事実であるのに対し、後者は『行くかどうかわからないけど、行くんだったら』というニュアンスです。
個人的な見解ですが、接続法は仮定や願望、心の中で思ったことなどを述べる場合に用いるものなので『確度が低い』ものだと考えられます。
よって後者の文は、行かない確率の方が高いイメージです。
とはいえ、ここで言いたいのはそういうことではありません。
接続法を使うかどうかはこれだけ微妙な違いしかないので、どちらを使えばいいかわからないときは別に無理して接続法を使わなくても問題ないということです。
口語では問題なく通じますよ。
まとめ
ポルトガル語の仮定法について解説しました。
まとめると
・仮定法現在
・仮定法過去
・仮定法過去完了
・仮定法未来
の4つがありますので、正確に理解して使えるようにしましょう。